白あんの原材料

2015年10月13日
さて以前にあんこの原材料として 赤あん、粒あんには「アズキ種」が主に使われると書きましたが、今回は「白あん」によく使われるマメ科の植物について書いてみたいと思います。

前回と同じように下の図をもとにして説明していきます。

白あんの原材料


白あんの原料として使われるマメですが、私は三つに分類できると思っています。

インゲンマメ属インゲンマメ種、インゲンマメ属ライマメ種、ササゲマメ属アズキ種 です。以下はそれぞれについて簡単に説明したいと思います。


face01 インゲンマメ種

この中でも白色系の 手亡 白金時豆 大福豆 グレートノーザン が現在白あんの原材料としてよく流通しています。
 
hosi 手亡


さて上記の中で和菓子用の白あんの原材料の代表と言っても過言ではないのが手亡です。

その用途は幅広くみなさんが和菓子と言えば真っ先に思い浮かべる上生菓子の練り切りから大判焼き(回転焼き)の白(粒)あんまで多岐に渡ります。

また、永年手亡といえば北海道産と相場が決まっていましたが、ここ数年は外国産、特に北米産のものがかなり流通してきました。


hosi 大福豆


大福豆は白あんの原材料の中で「高級菜豆」と呼ばれるものの一つです。(「高級菜豆」については後述します。)

hosi 白金時豆

白金時豆は日本を代表する老舗㈱虎屋さんが羊羹に使っていることで有名です。

また我々大阪(特に泉州)の人間にとっては㈱青木松風庵さんの「月化粧」の材料として知られています。

実は私は白金時豆は高価なことからてっきり「高級菜豆」の一つだと思っていたのですが、後述する草型の分類上はわい性に属するため「高級菜豆」に含まれません。


face01 高級菜豆と品種の草型によるタイプ分類


インゲンマメ種には、種皮の色や模様、豆の形や大きさが異なる様々な品種がありますが、品種による形態的な違いが大きく、草型により次のようなタイプに分類されます。

hoshi2 叢性

つるを出さず、主茎頂部に花房がつき、分枝して横に広がります。草丈は55~65cm程度で、栽培時に支柱は不要です。手亡(てぼう)類のうち、近年栽培されている「姫手亡」、「雪手亡」、「絹てぼう」がこれに該当します

hoshi2 半つる性

つる性とわい性の中間タイプです。つる性と同じように、つるを出して主茎頂部に花房を付けませんが、茎長は100~120cm程度で、支柱を立てずに栽培します。このタイプは、手亡類のうち「大手亡」、「銀手亡」や、うずら類のうち「福粒中長(ふくりゅうちゅうなが)」などかつて多く栽培されていた品種にみられます。

hoshi2 つる性

つるを出し、主茎頂部に花房を付けず、周囲のものに巻きつきながら伸長を続け、草丈は2.5~3mにも及びます。このため、ネマガリタケ等から作った「手竹(てだけ)」と呼ばれる支柱を立てて栽培します。虎豆類や大福(おおふく)類がこれに該当します。なお、いんげんまめとは種が異なる「べにばないんげん」に属している花豆類もほぼ同様な方法で栽培され、用途にも大差がないことから、上記のようなつる性のいんげんまめと併せて「高級菜豆」と総称されています(注:「菜豆(さいとう)」はいんげんまめの別称。)。

hoshi2 わい性

つるを出さず、主茎頂部に花房がつき、草丈は35~40cm程度で、栽培時に支柱は不要です。金時類全般やうずら類のうち、近年多く栽培されている「福うずら」がこれに該当します。




face01北海道のいんげんまめ(菜豆)の優良品種指定状況
(公財)日本豆類協会HPより

白あんの原材料

hosi グレートノーザン

カタカナ表記であることから推測される通り日本ではなく、主に北米大陸で栽培されています。

手亡と比較的味が近いことから海外で手亡が栽培される以前は、その代用品として流通していました。

次に白あんの原材料として最も流通量の多いライマメ種について説明します。

face01 ライマメ種

インゲンマメ種に対し、ライマメ種は価格面、安定供給(この両者は密接な関係にあります)で優れています。

白あんの原材料全てのなかで日本で和菓子用にもっともよく流通しているのが バタービーン ベビーライマ で、流通量ではインゲンマメ種をはるかに凌ぎます。

次にこの二つを比較する形で述べていきます。

hoshi2 生産地

ベビーライマ U.S.A.
バタービーン ミャンマー
 
hoshi2 価格

ベビーライマに比べてバタービーンの方が安いというのが私達の世界の常識でしたが、近年ベビーライマの価格が高騰したことにより、その価格差は広がる傾向にあります。

hoshi2 輸入(流通)量

バタービーンとベビーライマを比較した場合、輸入量はもともとがバタービーンの方が多かったのですが、上記の価格面の理由から輸入量としてはベビーライマは減少傾向にあります。

hoshi2 品質、特徴、味

用途はこの両者は共通しており、上生菓子以外のあらゆる餡に使われています。
味についてはわたくしなりの見解はあるのですが、人と其々、好みの問題ですのでここでは書かないようにします。



face01 ササゲマメ属アズキ種

これは 白小豆 のことです。


今まで説明したきたもの(豆)は全てインゲンマメ属に属しますが、白小豆だけはササゲ属アズキ種に属します。

つまり、小豆の一種です。

そして、私の推論ですが白あんの原材料としてもっとも古くから使われていたのが 白小豆 です。

hosi 火坂雅志著「羊羹合戦」


火坂雅志著「羊羹合戦」という小説があります。(残念ながら私は未読ですが)

紹介を引用すると

秀吉の“紅羊羹”を超える羊羹を作れ―。直江兼続より、翌年行われる関白主催の花見の会での上杉家の羊羹作りを任された庄九郎。練り羊羹を味わったこともなかった庄九郎による、越後ならではの羊羹を求めての戦いが始まった(「羊羹合戦」)。

さてこの「紅羊羹」というのが

1589年 (天正17年) – 蒸羊羹を改良して作られた「伏見羊羹」別名「紅羊羹」で、 豊臣秀吉の茶会で、で諸侯に引き出物として用いられ絶賛された歴史があります。

「鶴屋」「5代目岡本善右衛門」により従来「蒸し羊羹」しかなかった羊羹を、寒天を入れて改良した、今日の「練羊羹」を最初につくったのが、今日の「駿河屋」です。

hosi 豊臣秀吉の大茶会までの 駿河屋

室町時代中期の1461年(寛正2年)6月に、山城国伏見九郷の里舟戸の庄(現在の京都市伏見区)に、「初代岡本善右衛門」が「鶴屋」の屋号で、饅頭処を開いたのが始まりである。



「5代目岡本善右衛門」の時の、1589年(天正17年)に京町に移り、伏見の桃山城の正門前に店を構えた。

「5代目岡本善右衛門」が、1589年(天正17年)に「煉羊羹」を作り、豊臣秀吉に献上、聚楽第で秀吉が開いた大茶会で当店のようかんが引き出物として配られて諸大名の賞賛を受けたと云われている。



1589年 (天正17年) – 蒸羊羹を改良して作られた「伏見羊羹」別名「紅羊羹」を発売。豊臣秀吉の大茶会で諸侯に引き出物として用いられ絶賛される。

一方、今日白あんの原材料として一般的なインゲンマメはいつ頃日本で流通したのでしょうか。


hosi インゲンマメの歴史

16世紀末にヨーロッパを経由して中国に伝わり、17世紀に日本に伝わったと言われている。1654年、明からの帰化僧・隠元(いんげん)隆琦が日本に持ち込んだとされている。

上記の説を肯定するなら、1589年 (天正17年) 豊臣秀吉の大茶会で諸侯に引き出物として用いられ絶賛された「紅羊羹」の白あんは 白小豆を使ったことになります。




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Posted by 安儀製餡所 at 15:44 あんこ豆知識コメント(0)
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