今回はHP でも紹介されている特別栽培小豆について説明します。
が、その前に有機栽培について少しふれておきます。
特別栽培小豆の歴史
実は平成13年4月1日まで「有機小豆」と呼ばれる小豆が存在したのです。
JAS法によって平成13年4月1日から有機栽培に対する明確な基準が設けられるようになるまで、市場には 「有機~~」という農産物が氾濫していました。それらは玉石混合で現在でも有機栽培として通用するものから、化学肥料の代わりに数回
有機肥料を与えたもの、酷いものになると全く慣行農法通りのものもありました。
そのような状況の中、平成13年4月1日JAS法によって「有機栽培」は以下のように定義されたのです。
● 有機栽培
「有機低農薬栽培」「有機減農薬栽培」などという紛らわしい表示が氾濫したので、JAS法によって平成13年4月1日から「有機」や「オーガニック」と表示するには、検査を受けて合格したものに限られるようになりました。JASマークが付いていないものには、「有機農産物」、「有機栽培」、「有機○○」等の表示をしてはならないのです。JAS法で有機農産物とは、「化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本として、播種又は植付け前2年以上(多年生作物にあっては、最初の収穫前3年以上)の間、堆肥等による土づくりを行ったほ場において生産された農産物」と規定されています
このJAS法に適合する小豆が存在しなかったため 「有機小豆」 と表示された小豆はなくなりました。
小豆が適合しなかった理由は以下の通りです。
Ⅰ 小豆は連作(同一の圃場で同一の作物を繰り返し栽培すること)が難しく、前年に栽培した別の農作物まで有機栽培で行はなければならなくなる。そこまで徹底することは経営的に難しい。
Ⅱ 100%無農薬で栽培するのは圃場に広さから害虫被害の危険が大きく難しい。
その結果、それまで「有機小豆」と表示されていたものは、無化学肥料栽培小豆、減農薬栽培小豆、減化学肥料栽培小豆
と表示されるようになりました。
その後、平成16年4月から「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」が施行され、適合するものは特別栽培小豆と表示されるようになりました。
表示ガイドラインでは特別栽培農産物は、以下のように定義されています。
●特別栽培農産物 略称:特栽
平成16年4月から「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」が施行されました。以前は、無農薬栽培農産物、無化学肥料栽培農産物、減農薬栽培農産物、減化学肥料栽培農産物と設定されていたのを、一括りの名称「特別栽培農産物」に変更されます。ガイドライン表示の対象となる農産物は、化学合成農薬、化学肥料双方を慣行の5割以上減らして栽培された農産物となります。「無農薬」、「無化学肥料」、「減農薬」、「減化学肥料」の表示は、改正後は表示できないことになりますが、ガイドラインには罰則がありません。
対象農産物は国産・輸入を問わず、野菜、果実、穀類、豆類、茶等であり、米については特に特別栽培米と呼ばれる。なお、減ずる対象となる化学合成農薬からは有機農産物JAS規格で認められている農薬(例:フェロモン剤等)は除かれている。
●有機栽培と特別栽培の違いは以下の通りです。
有機農産物が播種前2年以上及び栽培期間中に対象となる農薬・化学肥料を使用しなかった農産物のことであり、これに対して特別栽培農産物は栽培期間中に対象となる農薬や化学肥料を減じて生産されたものをいいます。また、播種前についての条件も存在しません。
なお、栽培期間中に対象となる農薬を一切使用しなかった(播種前の制限は無い)農産物は、「特別栽培農産物(節減対象農薬:栽培期間中不使用)」と呼ばれます。
当該農産物の生産過程等における節減対象農薬の使用回数が、慣行レベル(※注)の5割以下
当該農産物の生産過程等において使用される化学肥料の窒素成分量が、慣行レベル(※注)の5割以下
※注:慣行レベルは都道府県によって定められている。
特別栽培小豆と他の北海道産小豆の実態
●栽培方法別による特別栽培小豆の分類
特別栽培小豆の中でも 「ホクレン」 より販売されているものは 「クリーン100」、「クリーン80」という商標で販売されています。これらの特徴は、生産過程等において使用される化学肥料の窒素成分量が0、あるいは慣行レベルの2割ということです。「クリーン100」は十勝地方、「クリーン80」は、旭川地方を中心に栽培されています。
以下の図は栽培方法別による特別栽培小豆の分類をまとめたものです。
以下のグラフは北海道産小豆のうち特別栽培小豆と慣行農法により栽培されている小豆の生産量の内訳です。(H.22べース、ただし公式な統計は存在しないので推定です)
ご覧のように特別栽培小豆は北海道産小豆の生産量のわずか1%しかありません。
以下のグラフは特別栽培小豆のそれぞれの生産量の内訳です。(H.22べース、ただし公式な統計は存在しないので推定です)
特別栽培小豆の長所と問題点
●長所
Ⅰ 現在市場に出回っている小豆の中でもっとも 安全・安心な小豆と言える。つまり流通経路の追跡が可能であり、また下の写真にあるように栽培の過程が明確に表示されて一目でわかるようになっています。
Ⅱ 次に最も重要な’味’についてですが、これは個人の主観が入るので一概には言えないのですが、私個人としては特別栽培の方が勝っていると思っています。弊社でもこれまでお客さまに何人も食べ比べていただいてきましたが、必ず特別栽培小豆の方を選ばれました。
●問題点
Ⅰ 栽培に手間がかかるため、価格が他の小豆よりも高い。二等小豆(※注)に対し特栽のプレミア価格として3,000~ 5,000円/60kg上乗せされている。
※注:一般的に市場で取引されている小豆の中で最高級の小豆
Ⅱ 農作物であるため、その年の天候その他の自然条件によっては、化学肥料あるいは農薬を特別栽培のガイドラインより多く投入しなければならない場合がある。その場合、特別栽培の表示はできない。
Ⅲ 現在のところ、科学的に慣行農法によって栽培された小豆との明確な優位性を示すことはできない。
Ⅳ 生産量が小豆全体の1%程度であり、供給能力に不安が残る。
まとめ
上記で示したように現状の特別栽培小豆には問題点がたくさんあります。
特に一番多いのは「高い値段を払うだけの価値があるのか?」という点です。「特別栽培小豆が慣行農法の小豆に対し科学的に優れている点を示してくれ!」というお客さまもいらっしゃいます。今のところその質問に対する明確な答えは用意できていません。
「高い価格に見合うだけの価値はない!」と判断される方、あるいは「有機栽培」ではなく「特別栽培」などという分かり難い表示では意味がないというお客さまがいらっしゃるのも事実です。
一方、自らの舌で判断して「やっぱりこの豆で作った あんこ はおいしい!」とおっしゃるお客さまがたくさんいらっしゃるることも事実です。
私としては、価格さえ折り合うのであれば流通経路の追跡が可能であり、栽培の過程が明確に表示されている特別栽培小豆は現行最も安全・安心な小豆であり、その味も含めてお客様に味わっていただきたいと考えています。
岡山産の豆 (2021-12-12 19:33)
十勝小豆 (2021-12-02 22:55)
黒餡? (2019-08-16 20:42)
北海道 伊達市での小豆栽培の歴史 (2017-12-19 18:34)
中国産小豆を使った丹波産あんこ (2017-09-02 16:09)
土用餅と土用波 (2017-07-25 14:58)